創業者メッセージ
IT分野と異なり、リアルな物質の絡む世界で新たな製品を生み出し、製造しようというスタートアップは本来避けた方がいいでしょう。新たな技術は簡単には生まれず、何をするにも大きな費用がかかり、リスクが小さくないからです。しかし、私が敢えてそれを始めたのは、ふと次のようなことを思ったからです。
もし、将来エネルギーが不足して、あるいは環境面から使用が制限されて、暑さ、寒さをがまんしなければならなくなったらどうだろう。もし、食糧不足で常に空腹だったらどうだろう。もし、飲み水が得られなかったらどうだろう。もし、治療手段の無い病気で苦しむことになったらどうだろう。他のことは何とか耐えられても、これらリアルな苦痛はとても耐えられそうにないのです。しかし、近い将来、災害や国情の変化、あるいは環境問題の深刻度によってはあっという間にそういう状況に追いやられるかもしれません。また、世界の中では今現在こういう状況にある地域もあります。少なくともそういうリアルな苦痛だけは心配しなくていい世界であったらと思うのです。
小さなスタートアップがエネルギー、環境、食糧、水、ヘルスケアのリアルで大きな課題に挑むのは身の程知らずかもしれません。しかし、本来会社とはやるべきことを効率的行うための仕組み、装置にすぎないのであって、大事なのは会社ではなく、少しでも意志と能力があるのならば、やるべきことをやることだと思うのです。私は学生時代、電池として機能するオリジナルの金属間化合物(Zr7Ni10)を発見して以来、約40年間研究畑のみを歩いてきました。その間、企業では電池の開発、地方の公的研究機関ではセラミックス材料の開発、そしてまた別の企業では独自の無機/有機ナノハイブリッド材料を発明し(ナノテク大賞2014 新人賞)、燃料電池、化学合成用触媒、抗菌・抗ウイルス材などへの応用を研究してきました。それらさまざまな種類の物質や機能化学製品を扱った経験を活かし、エネルギー、環境、食糧、水、ヘルスケアなどリアル世界の問題解決に少しでも貢献していきたいと考えています。
ケミオでは現在、受託研究からビジネスを始めており、大手企業様からの委託により、自然エネルギー利用技術や電池等に関する研究開発を進めております。また、独自の材料で構成されている生態系への影響の少ない抗菌・抗ウイルス材も製造・販売を始めており、身近な水除菌材として使用していただく他、農業、養殖、畜産などフードビジネスの問題解決にも寄与したいと考えております。
ケミオ株式会社 代表取締役社長 澤 春夫 (理学博士)